農大版オクトーバーフェスト。
これをやったからと言って、武藤も、武藤に協力した人々も、祭りに参加したメーカーも、楽しんだ客も、『明日から地ビールが大々的に知れ渡る』なんて、これっぽっちも思ってないだろう。
祭りが終われば、はなちゃんのビールを売る奮闘は続くし、不条理なクレームに相変わらず唇を噛む日々が来るのだろう。
「では、あの祭りを開催したことに意味は無かったのか?」そう問われれば、今度は「そんなことはない」と応える人達は恐らく100%だと思う。武藤も、参加者も、客も、メーカーも、そして『もやしもん』を読んだ読者も。
まずは、知ってもらうこと、先入観抜きで、直にふれて貰うことで興味の扉に手を掛けてもらう。その価値は、計り知れないほど大きいことを、誰もがよく知ってるからだ。
頭ごなしの地ビール批判一色だった武藤が、己の偏見の形を知り、ビール作りの現場を知り、「力になりたい」と素直に思って行動した。ミス農大の力をフルに使って学校、さらに業界を巻き込んでのオクトーバーフェストは。『ビールとはなにか』、と言う問いに『笑顔が最も似合う飲み物』という答えを出した武藤の、その『笑顔』を守るために何をするのか、『味で勝負するための環境を、どう整えるのか』を行動で示したもの。
武藤の目線がもし一段高いところからの「協力を恵んでやる」だったり、低い目線から「協力させてください」とへつらったものだったら、何もかも駄目になっただろうけど。
そうではなかった。
彼女の目線は、はなちゃんと同じだった。だからこそ、はなちゃんに武藤の気持ちは通じたし、最後の、あの笑顔の写真に意味が生まれた。
同時に「楽しむためのもの」を守るために、何か必要かを強く示唆していた武藤の行動は、『学問』の根幹を体現したとも言えるのだろう。
『体得した知識を社会に還元することで、初めて人を生かす智恵となす』は、私の持論だが。8巻で感じる大きな歓びは、知識を正しく社会に還元できた時だけに味わうる智恵の果実の味であり。
孤軍奮闘するはなちゃん=地ビールに向けられた、「あなたの生み出すもので、誰かが幸せに笑える。だから、一人ではないよ」という、暖かいメッセージだと思う。
そして、読み手の地ビールへ感じていた「何となく敷居が高い」と言う壁の高さを低くして、スーパーに並ぶ瓶や缶のラベルの後ろに、なんとなく『これらひとつひとつ、誇りを抱いて心を込めて造っている人々がいるんだ』と感じさせて、「何となく飲んでみようか」と思わせる後押しになれば。
オクトーバーフェストは、大成功だろう。
そんな、静かだけど大きな大きな広がりを感じさせてくれる8巻が、大好きです。
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